自由な楽校5時間目は、薪運び。もう子どもたちにとったら日々の作業だから慣れっこ作業。そこに、(養老孟司さんが提唱している)バカの壁を乗り越える実学の知識を。
この松はなぜ斬られ、どこから、どんな思いで、父ちゃんが運んできたかというお話を。
トラックに満載されている木はすべて屋久島西部に自生している枯れた黒松。全国的に広がりをみせる松枯れ。これは、マツノザイセンチュウによるものです。屋久島では数年前に島の東部、そして南部が大きな被害にあいました。そして、去年から西部の世界自然遺産エリアで大量に松ガレが始まっているそうです。今年はすでに確認されているだけでも100本以上あるそうです。西部には、屋久島と種子島にしか自生していない絶滅危惧種のヤクタネゴヨウマツが多く自生していますが、彼らも枯れ始めているそうです。
林業の職人さんたちが倒したいポイントへ、無駄のない見事な手捌きで大木を倒していきます。
枯れた黒松の中にはカミキリムシの幼虫がたくさん。彼らは5月になると成虫となって、また新たな松に移動し木に穴をあけ、被害が拡大していくそうです。しかし、カミキリムシが松を枯らしているわけではありません。
写真がカミキリムシの幼虫。
松を枯らす直接的な原因は、彼らに付着しているマツノザイセンチュウ。長さ1mmほどの透明のミミズのような生きものです。線虫は病原性を持ち、マツを枯らすことができますが、他のマツへ移動することができないので、カミキリムシがサナギの時に、蛹室内に入り込み、カミキリムシの気門に侵入し、成虫になるのを待っているそうです。そして、羽化したカミキリムシと共に新たな松へと進入していくそうです。
マツノザイセンチュウが侵入する過程で、細い仮道管に気泡が発生し、管内部に空洞が形成され、この空洞が栓となるそうです。人間で言うと血栓ですね。樹液の流れを妨げられた松は弱り、やがて枯れていくことがわかっているそうです。その現象をキャビテーションといういうらしいですが、なぜ気泡が発生するかはまだ解明されていないそうです。
今回、枯れた松を切り、カミキリムシが成虫になって飛び出す前に、燃やしてしまおうという策ですが、ボランティアで現場に参加した感想だと、すべてのカミキリムシを除去するのは、とても難しく感じました。風の谷のナウシカの映画で、風の谷に腐海の胞子がやってきて、村人総出で、胞子を燃やすのですが、胞子は残り、谷は腐海へと飲み込まれていくというシーンが、どうしても脳裏によぎりました。枯れた松を除去するのは根本的な解決にはなってないなと。もちろん、拡大を最小限にするという意味では、とても大切なことだと思い、運び出しのボランティア作業に参加したのですが。
松枯れの直接的な原因は、地球で共に生きているマツノザイセンチュウではなく、人が作り出した県道にあると自分は思っています。
地球の地下にも無数の水の通り道と空気の通り道があります。人の血管に血栓ができると死ぬように、松の仮道管に空洞ができると枯れるように、大地のパイプラインもアスファルト舗装で遮断されると、同様の現象が起きると思われます。
いきなり、何を言ってるの?と思うかもしれませんが、新潟で環境改善した森では松枯れが全く無くなったという記事、是非ご覧ください。
枯れた松は細いのは、料理用に。太いのは塩づくり用に。
4月中にすべて燃やさないとですが、日々薪暮らしのアペルイでは1週間もあればすべて燃やせることでしょう。
5時間目は、理科と社会と体育と家庭科のミックス授業。子どもたちには少し難しかったようですが、いつか自然を好きになった時、いつの日か自然を大切にしていきたいと思った時に、多角的に自分のアクションを決定できる意味のある授業だったと思っています。
さあ、小学校はまだまだお休み。
10分休憩したら6時間目もはりきって行くぞー!
松枯れの仕組みが、初めてよくわかりました。マツノザイセンチュウのしたたかな生き残り戦略に、カミキリムシが使われていたとは。小さな気泡が血栓のように命取りになるとは。
人間界では嫌われいるマツノザイセンチュウの生き抜く力に、美しさすら感じてしまいます。