自由な楽校6時間目は海岸でボルダリング(岩登り)。ボルダリングには教育的価値がたくさん内包されています。
登ってみたい!という好奇心
よしやってみよう!という勇気
でもできるかな?という不安
落ちたらどうしよう。。という恐怖心
落ちた時の痛みと悔しさ
登りきった時の感動
まわりのみんなに祝福される喜び
さらなる湧き溢れる夢へのワクワク
この感情の螺旋状のループを繰り返して行くうちに、少年はいつの間にか大志を抱き、夢を追い続ける力を勝手に身につけていくものだと確信しています。
この感情はすべて大人からトップダウンにおりてきたものではなく、ただただ目の前に岩が現れ、能動的に子どもたちが自然と抱いてしまった感情なんです。子どもたち自身もなぜ岩に登りたくなったのかは正直わかっていないと思うので、能動的という言い方も正確にはあっていません。無言の岩は究極のエンターテナーです。大人は環境を整えるだけで後は木の上から黙って見ているだけのちっぽけな存在だと気を楽にしているほうが良いのかもしれません。子育て!しつけ!なんて力まずに。
ネイティブアメリカンの人たちは、人間が誕生する前から存在している石を敬意を込めて先輩と呼ぶそうです。岩は威厳に満ちていて、荒々しくもあるけれど、人に冒険心を芽生えさせてくれる懐の深いほんとう偉大な先輩です。
そんな偉大な先輩とは裏腹に、同種族の先輩大人たちが作りあげた人間社会では、星の数ほどの「やれ!」という受動的なタスクでいっぱい。人はみな怠惰にできているので、大人になれば己の技術を高めるためにそのタスクはとても重要になってくると自覚していますが、子ども時代に浴びせまくると、自分が何になりたいのか、何をしたいのか、よくわからなくなってしまうこと、とても多いと思うんです。アペルイにやってくる20代の若者が「自分はやりたいことがないんです。。」「自分にとってやりがいのある仕事っていったいなんだろう。。」「仕事したくないんです。」なんて言葉を投げかけてくるたびに、この子たちはどれだけたくさんのタスクを詰め込まれて、何をしたら自分の心が喜ぶのかという心との問答する時間を、いったいどれほど奪われてきたのだろうと想像してしまいます。翼をもがれた鳥のように見えてきます。
自分の好きなことで誰かが喜んでもらえたら最高に幸せで、社会に飛び出して、自分のやりたいことで勝負して、それを仕事にして試行錯誤しながら業を全うしていこうという日々は本来、とてもエキサイティングで楽しいもののはずなんです。
森のようちえんの子どもたちを観察していると、彼らはいつもキラキラで、本当にやりたいことしかしないんです(笑)。本来ヒトは夢多き生きもので、好奇心旺盛で、やりたいことがたくさん心に思いついちゃう生きものなんだと思います。それが小学、中学、高校と進むうちに、すっかり思考回路が真逆の別の生きものになってしまうんです。あれやりたい、これやりたいという好奇心はじっくり減少していき、自分の心より、周囲の視線のほうが気になって、場の空気を読む癖がいつの間にか身についてしまいます。そして、かつては好きなことだらけだった若者はタスクの洪水にもまれていくうちに、いつの間にか自己中心的な「あれやりたい!」「これやろうよ!」という心の本音を大人たちに言いにくくなってしまうこと、とても多いと思うんです。
好きでもない仕事をストレス抱えながらイヤイヤこなしている大人たちが、良かれと思いこんで与え続けてきたしつけや教育、常識の押しつけ、感情的な怒りの説教が子どもたちに与える影響は計りしれないと想像されます。
大人になって哲学が身につく世代になって僕が思うことは、人生でもっとも大切なことは夢を追い続ける意思をもち続けることだという思いに至っています。人間サイドがサジを投げない限りは、夢自身は誰のもとからも去ってはゆかないものですが、夢を追うことをあきらめたり、投げ捨てたり、できないと決めつけて、しんどい登山をあっさりやめてしまう大人たちをこれまで数えきれないほど見てきました。しかし、ひつこく、ねちっこく夢を追い続ける大人たちにも同じ数ほど出会ってきました。それが僕にとっては最高の財産となっていますが、その夢追い人たちはみな、森のようちえんの子どもたちと同じ目をしているんです。
みんなが好き勝手にやったら収集がつかなくなるに「違いない」。
みんなが我慢をして頑張って働かないと経済が破綻するに「違いない」。
夢を追ってない現状維持派はよくそんな「違いない論」を展開して、未来を冒険できない安定的なツマラナイ世界にしようとしてきます。夢追い人からしたら、行動をおこさない現状維持は、行動して失敗した以上の後退。
みんなが好き勝手にやりたいことに没頭したら
きっと愛の溢れる思いやりのある調和の社会になるよ
ストレスをかかえながらこなされる仕事より
好きなことをしている大人がクリエイトする仕事のほうが
断然楽しげで質の高いものに決まってる
みんなやりたくない仕事なんかやめちゃったらいいよ
そしたらきっと、嫌な仕事させる組織は消滅して
世の中には楽しい職場しか存在しなくなるから
そして経済はもっと健全で質の高いものになるから
嫌なことをする人がいなくなったら困るじゃないかって
嫌なことは先進国の人も富める人も協力してやってくれたら
たいしたことじゃなくなるよ
好きなことに向かって、勇気をだして冒険してるときの内からみなぎる高揚感やワクワク感、やる気は、持久力があってハイパワー。石油やマネーより断然高品質で、CO2を出さないフリーエネルギー。教材は、視界いっぱいに広がるフリーの自然。
君たちからいつも泉のようにあふれだすその冒険心をエネルギーに
子どもたちよ大志を抱け!