屋久島の冬は7時を過ぎないと明るくなってくれない
だから小学校に通う長男坊の朝ごはんは暗いうち
手作りの竃(かまど)に火を灯す
まだ2ヶ月と半分しか経っていないけど
もうおじいさんのような佇まい
かまど爺さんの眉毛は煤(すす)で極太に
ヒビも入ってシワだらけ
今日はオシャレな羽釜の帽子をかぶってお米を温めてくれるそうです
タネをまいて
苗を植えかえて
雑草を抜いて
収穫をして
脱穀をして
モミをとって
精米して
山の水に浸けて
薪を割って
組んだら
ようやく、ようやく準備ばんたん
あとは羽釜帽子のカマド爺さんにすべてを託して
ボッボッボッボッ
グツッグツッグツッ
帽子の蓋から泡が噴き出し始めたらあともう少し
弱火にして待つばかり
じゃじゃ〜ん
できあがり〜
帽子の蓋をとってお米から香りたつ湯気におおわれると
去年の農作業風景と手伝ってくれたみんなの顔が
走馬灯のように現れは消え
いつの間にか手を合わせて目を閉じている
そして声にだすことはなく
心の中で「幸せだなあ」「ありがとう」「いただきます」とつぶやいている
お米づくりと薪の暮らしには
この朝ごはんの米粒たちほどの
小さな苦労と小さな幸せがたくさん詰まっています